コース要綱

:(9300082)金融商品取引法

[講義基本情報]

教員: (非常勤) 根本 敏光
その他の教員:
科目種別: 展開先端
開講時期: 春学期 集中
対象年次: 3年(2年コース2年)
開講時限: 集中
単位数: 2
必修の有無: 選択
教室:

 

講義概要 金融商品取引法は,企業の資金調達やM&Aに携わる法曹実務家にとって,会社法と並び,避けて通ることができない最も重要な法律の一つです。しかし,その体系は広範かつ複雑であり,また金融・証券実務と密接に関わるという性質もあり,法科大学院生にはイメージを持ちづらいというのが実情かも知れません。本講義では,弁護士として,企業の資本市場を通じた資金調達やM&Aその他の取引を法的観点からサポートするとともに,証券会社,証券取引所,金融庁などの市場関係者とも日々協働する講師が,実務の観点からの問題意識も取り混ぜながら,金融商品取引法を体系的に解説します。さらに,具体的な事例・設例等を通じて,討議し理解を深めるとともに,法曹実務家が具体的な事案を前に金融商品取引法とどのように関わり,取り組んでいくかについてもお話ししたいと思います。 具体的には以下の通りです。
(1)金融商品取引法及び関係政令・内閣府令について,(i)情報開示規制,(ii)不公正取引規制,(iii)業規制という基本的な枠組みを踏まえて取り扱います。
(2)発行会社の資金調達,投資者向けの情報開示,公開買付け等のM&A,不公正な取引,不適切な投資勧誘等の具体的な局面を意識しつつ,金融商品取引法規制の役割と機能を考察します。
(3)日本の金融商品取引規制に併せて,時間が許せば,米国の証券取引規制についても適宜参照します。
(4)具体的な資料・設例・裁判例等の提示を通じて検討し討議します。
(5)金融商品取引法の体系的理解を基本としつつも,法律実務の場面における金融商品取引法との具体的な関わりについて,法曹実務家の視点からの問題意識や課題を例に挙げつつ,具体的に触れたい。
到達目標 (1)授業とその予復習全体を通じて,金融商品取引法規制の全体的な枠組みについて理解することができます。
(2)設例と質問を通じて,実務家として取り扱うことの多い金融商品取引法規制及びその論点について,問題を発見し,分析し,調査し,解決することができるようになります。
(3)講義と討議を通じて,金融商品取引法規制上の問題について,基本的な制度趣旨から論理的に思考して議論を展開し,実務的な観点も考慮して適切な結論を導くことができるようになります。
(4)金融商品取引法規制の問題解決を通じて,法律問題の分析,検討,解釈,あてはめ,結論の導出という法的思考に習熟することができるようになります。
(5)さらに,法曹実務家が具体的な事案を前に,金融商品取引法とどのように関わり,取り組んでいくかについて,イメージをもつことができるようになります。
教科書 教科書として次の本を指定します。 
中村聡『金融商品取引法アウトライン』2017年(4月刊行予定),商事法務
なお,講義は,教科書の章立てを追うことなく,講義計画と講義前に配布するアウトラインの順序及び内容に従って行います。
参考書・参考資料 六法は,収録されている法律の条文及び政令・内閣府令に鑑み,以下のいずれかを推奨します。
『証券六法』新日本法規
『判例六法Professional』有斐閣 授業で必要となる法律及び政令・内閣府令の一部は,携帯用小型六法には掲載されていない場合があります。携帯用小型六法を用いる場合には,省略されている法律の条文及び政令・内閣府令の条文は,法令データ提供システム等で確認することが必要になることに予め注意してください。
参考書としては,次の本を紹介します。
近藤光男=吉原和志=黒沼悦郎『金融商品取引法入門(第4版)』2015年,商事法務
近藤光男ほか『基礎から学べる金融商品取引法(第3版)』2015年,弘文堂
講義で理解・記憶して欲しい水準で,全体像を見渡せる優れた副読本
黒沼悦郎『金融商品取引法入門 第6版』2015年,日経文庫
新書で全体像のさわりだけ理解したい方向けの本 その他の参考書・参考資料等については適宜紹介または配布します。
成績評価方法 小テスト・発言・討議参加の割合を40%,学期末試験の割合を60%として評価した上で,成績分布を考慮して点数を調整し,最終評価とします。
到達目標(1)について-小テスト・発言・討議参加,学期末試験
到達目標(2)について-小テスト・発言・討議参加,学期末試験
到達目標(3)について-発言・討議参加,学期末試験
小テストは基本的な選択式問題で,集中講義期間中に1,2回程度実施します。
学期末試験は実践的な論述問題で,集中講義の試験日に,持ち帰り可能な試験(take home exam)として実施します。原則として参照可能な文献・資料について制限はありませんが(open book),利用の公平の観点から試験時間中は名古屋大学の蔵書(法学部図書室,研究室等)の利用を禁止します。また,他の者との間の相談,討議,情報・意見の表示・提供・閲覧・受領その他受験者個人の学習成果を測定する妨げとなる行為は禁止します。詳細は集中講義の際に指示します。
履修条件 (1)商法基礎を履修していること。
(2)インターネットが利用可能な環境を有すること。
その他の注意 担当教官以外の教師-講義内容によっては,当該分野について専門性を有する弁護士が講義を担当又は補助することがあります。 最近年度の成績分布
     特A   A    B   C  D(受験者) D(不受験)
H28  02  06  09  06     00     01
H27  03  06  09  05     00     01
H26  04  12  18  07     00     07
H25  03  07  16  04     00     03
H24  03  11  11  05     00     06
H23  01  04  04  02     00     06
H22  02  05  09  03     00     09

 

1 総論

法曹実務家と金融商品取引法規制との関わりについて理解します。金融商品取引法の目的と基本構造を理解します。金融商品取引法規制とその適用場面についての具体的イメージをもてるようにします。 アウトライン(配布資料。参考資料を含みます。以下同じ。)に一通り目を通して準備して下さい。教科書「第Ⅰ章 総論」について予習して下さい。
2 金融商品取引市場と金融商品取引

有価証券の売買取引を例として,市場を通じた取引の流れについて確認し,市場の機能・分類,決済制度等について理解します。市場関連の最近の動きを追います。 アウトラインの該当箇所に一通り目を通して準備して下さい。教科書「第Ⅴ章 自主規制機関と市場基盤」及び法令の関係条文について予習して下さい。
3 発行市場における情報開示規制(1) 発行市場における情報開示制度について説明し,募集・少額免除・私募・売出し・私売出し等の基本概念について理解します。米国1933年法の枠組みについても必要に応じて言及します。届出義務を避けるための実務上の工夫について検討します。 アウトラインの該当箇所に一通り目を通して準備して下さい。教科書「第Ⅲ章第1節 概要」,「第Ⅲ章第2節 適用除外有価証券」,「第Ⅲ章第3節 発行市場における情報開示制度」及び法令の関係条文について予習して下さい。
4 発行市場における情報開示規制(2) 証券発行・上場における届出手続や目論見書について検討し,参照方式・発行登録制度についても検討します。会社法と金融商品取引法を踏まえ,証券発行・上場のための手続の連関を日程的にも理解できるようにします。 アウトラインの該当箇所に一通り目を通して準備して下さい。教科書「第Ⅲ章第3節 発行市場における情報開示制度」,「第Ⅲ章第7節 開示書類の訂正」,「第Ⅲ章第9節 公衆縦覧」,「第Ⅲ章第10節 電子開示」及び法令の関係条文について予習して下さい。
5 流通市場における情報開示規制 法定の継続開示制度及び証券取引所規則による適時開示等について説明し検討します。財務書類・監査制度の重要性を確認し,米国Sarbanes-Oxley Actについても必要に応じて言及します。上場会社の服する法規制としての情報開示という観点から考える意識をもつようにします。 アウトラインの該当箇所に一通り目を通して準備して下さい。教科書「第Ⅲ章第4節 流通市場における情報開示制度」,「第Ⅲ章第5節 外国会社による英文開示制度」,「第Ⅲ章第6節 財務書類及び監査制度」,「第Ⅲ章第12節 取引所規則に基づく適時開示制度」及び法令の関係条文について予習して下さい。電子開示及び適時開示の実際について授業後確認して下さい。
6 情報開示規制と責任 情報開示規制を担保するための民事責任制度・刑罰・課徴金制度について説明し検討します。米国1933年法・1934年法の責任制度についても言及します。情報開示にかかる法的責任との関係でのデュー・ディリジェンスの意義,デュー・ディリジェンスにおける弁護士の役割,重要な情報とは何かについて理解します。 アウトラインの該当箇所に一通り目を通して準備して下さい。教科書「第Ⅲ章第8節 情報開示規制違反による責任」,「第Ⅶ章 実効性確保(エンフォースメント)」及び法令の関係条文について予習して下さい。指定の資料及び裁判例について予習して下さい。
7 国際的証券取引 米国証券規制の域外適用を考察し検討します。時間が許せば,日本法の域外適用,外国業者の規制,外国発行体の日本市場の利用についても検討します。日本の会社が海外で有価証券の募集を行う場合における外国法の適用と開示実務についても検討します。国際的証券取引に関する分析・助言能力の必要性を意識します。 アウトラインの該当箇所に一通り目を通して準備して下さい。
8 M&Aと情報開示規制(1) 上場会社のM&Aに深く関連する大量保有報告制度について説明し検討します。M&Aや上場会社の株式に関する取引に金融商品取引法の情報開示規制がどのように関連し,影響するか理解します。 アウトラインの該当箇所に一通り目を通して準備して下さい。教科書「第Ⅲ章第13節 大量保有報告制度」及び法令の関係条文について予習して下さい。
9 M&Aと情報開示規制(2) 上場会社のM&Aに深く関連する公開買付規制について,米国Williams Actも参照しつつ,説明し検討します。可能な限り,委任状勧誘規制も取り上げます。M&Aのプランニングの観点から規制上の問題を把握できるようにします。 アウトラインの該当箇所に一通り目を通して準備して下さい。教科書「第Ⅲ章第14節 公開買付制度」,「第Ⅲ章第15節 委任状勧誘規制」及び法令の関係条文について予習して下さい。
10 インサイダー取引規制(1) 米国1934年法・SEC規則10b-5によるインサイダー取引規制を参照しつつ,日本のインサイダー取引規制について説明し検討します。事例・裁判例を挙げて検討します。 アウトラインの該当箇所に一通り目を通して準備して下さい。教科書「第Ⅵ章 不公正行為規制(第1節から第4節)」及び法令の関係条文について予習して下さい。指定の裁判例についても予習して下さい。
11 インサイダー取引規制(2) 情報伝達行為・取引推奨行為規制について解説します。インサイダー取引規制の対象となる重要事実と適時開示との関係について検討します。刑罰,課徴金という実効性確保の手段についても検討します。また,インサイダー取引の未然防止を目的とした短期売買利益の返還制度と売買報告書についても考察し,検討します。上場会社とその役員の服する法規制という観点からも検討します。 アウトラインの該当箇所に一通り目を通して準備して下さい。教科書「第Ⅵ章第5節 情報伝達・取引推奨行為規制」,「第Ⅶ章 実効性確保(エンフォースメント)」及び法令の関係条文について予習して下さい。
12 相場操縦その他の不公正行為規制 相場操縦規制,空売り規制その他の不公正行為規制について説明し検討します。株式会社の自己株式取得について,会社法上の手続きを踏まえた上で,金融商品取引法上の規制について考察し,応用力を養う。事例・裁判例を挙げて検討します。 アウトラインの該当箇所に一通り目を通して準備して下さい。教科書「第Ⅵ章 不公正行為規制(第6節から第13節)」及び法令の関係条文について予習して下さい。
13 有価証券概念と業概念 横断的な投資者保護規制としての金融商品取引法の基礎をなす有価証券概念及びデリバティブ取引概念について概観します。有価証券・みなし有価証券の概念について,集団投資スキーム持分も含め,米国法も参照しつつ理解します。金融商品取引業の概念についても,ビジネスの実態を踏まえつつ理解します。 アウトラインの該当箇所に一通り目を通して準備して下さい。教科書「第Ⅱ章 金融商品取引法の適用範囲と主要な定義」,「第Ⅳ章第1節 金融商品取引業」及び法令の関係条文について予習して下さい。
14 業規制(1) 金融商品取引法のもとにおける様々な業規制について概観し,考察します。証券会社等の金融商品取引業者が市場と取引において担う役割の重要性と責務について理解します。 アウトラインの該当箇所に一通り目を通して準備して下さい。教科書「第Ⅳ章 金融商品取引業者等の規制」,「第Ⅴ章 自主規制機関と市場基盤」及び法令の関係条文について予習して下さい。
15 業規制(2) 金融商品取引業者を対象とする行為規制について考察します。業者の金融商品販売に関わる民事責任についても,金融商品販売法を含め,適合性原則と説明義務の観点から,事例・裁判例を挙げて検討します。また,金融ADR等の顧客との紛争解決手続についても理解します。 アウトラインの該当箇所に一通り目を通して準備して下さい。教科書「第Ⅳ章 金融商品取引業者等の規制」,「第Ⅶ章 実効性確保(エンフォースメント)」及び法令(金融商品販売法を含む。)の関係条文について予習して下さい。指定の裁判例について十分予習して下さい。
16 試験

※本コースにメンバー登録を希望する学生は下記URLにアクセスしてください。名大IDとパスワードで認証し、「コースへの登録」ボタンをクリックします。

https://canvas.law.nagoya-u.ac.jp/enroll/DEM9WC

Assignments Summary:

日付 詳細