コース要綱

:(9300051)法制史

[講義基本情報]

教員: 田中 実(非常勤)
その他の教員:
科目種別: 基礎隣接
開講時期: 春学期
対象年次: 1年(3年コース)
開講時限: 水2
単位数: 2
必修の有無: 選択
教室:

 

講義概要

 法は社会あるところに必ず存在し機能する漠然とした行為規範ではありません。古代ローマは、財貨の帰属をめぐる紛争を解決するにあたって、例えば多数決原理などを採用する議会とは距離をおき、論拠を限定しつつも開かれた議論を許容する裁判制度と裁判規範の構築に成功しました。このため、そこで作られた概念、議論の枠組、立論のあり方、制度、基本的な考え方は、諸国の、そして西欧大陸法を継受した我が国の法律学の範例の意味を持ってきました。法律家が、財産をめぐる真摯な紛争解決をめぐり発達させたこの知的な遺産の素養を持たず、超越的な価値を直接に援用し、正義感のみに訴える感情的な議論を常とするようになることは、社会にとって好ましいこととは言えず、耳に心地の良いスローガンだけに基づく判断が社会を悲惨な状況へと導くことは歴史的な経験の教えるところです。広い意味でのローマ法あるいはローマ法学が法曹教育において長い間、別格の扱いを受けてきた理由はここにあります。
  しかし明治期と違い、法学部でもローマ法は必修開講科目ではありませんから、この講義では、一方で、初学者を念頭に、総論としてローマ法の意義やその基本構造、歴史的展開、後代への浸透を説明し、各論として相続法を含む広い意味での財産法のいくつかの制度をポイントを絞って解説します。他方で、受講者と相談しながら、財産法領域の啓蒙的で刺激的な短い文献や最高裁の民事判例を選んで、過度に負担にならない形で報告を求め、現行法の科目とは異なる、この講義ならではの視点を持って議論を行う機会を作りたいと思っています。
  また、せっかくの歴史の授業ですから、古代ローマ時代や12世紀以降に書かれた法学文献の写本のコピーや、1500年代から1600年代にかけて印刷出版されたローマ法の解説書や今日の判例集に相当する文献の現物をお見せして、その意義を解説する予定です。

到達目標 a) 民事事件、刑事事件を通じて、ローマで法が拵えられた事情を知ることにより、社会が法を持ち、その中で法律家として働くとはどういうことなのかについて、反省的・批判的に考えることができる視点を得る。
b) 「公法」「刑事訴訟」「占有」「法律行為」「物権」「契約」「請求権」といった基本的な専門用語を、現行法の議論を一旦括弧に入れ、過去にどのように考えられてきたかという観点から検討できる素養を身につける。
教科書 特にありません。伊・独・仏・英の教科書関連部分の拙訳など、資料は配布します。
参考書・参考資料

原田慶吉
『ローマ法 ―改訂版―』有斐閣 基本書(中級)
『日本民法典の史的素描』創文社(中級)      

ゲオルク・クリンゲンベルク(瀧澤栄治訳)
『ローマ債権法講義』大学教育出版 基本書 明晰なチャート(初級)
『ローマ物権法講義』大学教育出版 基本書 明晰なチャート(初級)

ウルリッヒ・マンテ(田中実/瀧澤栄治訳) 
『ローマ法の歴史』ミネルヴァ書房 基本書(初級)

木庭顕
『ローマ法案内 ―現代の法律家のために―』羽鳥書房(上級)

『法学再入門 秘密の扉 民事法編』有斐閣 (中級)

『現代日本民法の基礎を問う : 笑うケースメソッド』勁草書房(中級)

『現代日本公法の基礎を問う:笑うケースメソッド』勁草書房(中級)

その他、講義に必要な文献や資料は配付又は指示します。

成績評価方法 平常点(40%)、学期末の筆記試験(60%)。
平常点及び筆記試験いずれも、到達目標a)b)の達成度を評価しますが、平常点は、上で述べた報告や日常の発言を通じ、b)をより重視した評価を行います。
履修条件 なし
その他の注意 なし

 

 

1

イントロダクション

4月13
授業全体の説明と参考文献の紹介 ローマ法及び法制史の意義
ローマ法の後代への浸透
ローマ法の意義を述べた文献を読む。
2

政治と法

4月20
古代ギリシアの政治と弁論術(レートリケー)
古代ギリシアの民事訴訟
自由概念の検討
ギリシアの法廷弁論とローマの弁論術教科書を読む
3

ローマ史と刑事訴訟

4月27
ローマの国制の変遷
共和政における二つの公裁判(刑事訴訟)
私法と公法の区別につき基本的知識を整理する。
4

ローマの社会構造

5月11
市民=国民(cives)と家からなる国(Societas civilis, Res publica, Commonwealth,, Gemeinwesen)の把握
国庫(aerariumfiscus
法人概念

民法400条と過失概念を整理する。

5

ローマの民事訴訟

5月18
法律訴訟
方式書訴訟
特別審理手続
様々な裁判官(多様な事実審)
民事訴訟の境界領域につき基本的知識を整理する。
6

民法総則から

5月25
代理類似の制度
時効
代理の基本的知識を整理する。
7

物権法から(1)

6月1

占有によって法を拵える。
不法行為訴訟としての占有訴訟
占有が問題となった判例又は裁判例を検討する。
8

物権法から(2)

6月8
様々な側面からの所有権の検討
プブリウス訴権と占有訴訟
他物権
物権・所有権の性質の説明を丁寧に読む。
9

債権総則から(1)

6月15
債権の意味 実体権、請求権そして訴権 権利の分類を確認する。
10

債権総則から(2)

6月22
自由と弁済(solutio 金融取引法としての債権法の基本的枠組みを確認する。
11

契約法から(1)

6月29

合意、契約、法律行為 契約の自由と類型強制 典型契約と前書訴権
売買と消費貸借から

法律行為論の意味を確認する。

瑕疵担保責任を確認する。

12

契約法から(2)

7月6
啓蒙的な文献、及び判例の検討

選択した文献、判例を予習する。

13

相続法から

7月13
相続人指定と遺贈
遺言の解釈
相続法の基本概念を整理する。
14

不法行為法と執行法から

7月20
不法行為法
罰訴権と損害填補
ローマの破綻処理
パウルス訴権の誕生
選択した問題につき、簡潔に解説できるようにする。
15 おさらいとまとめ これまでの講義のおさらいとまとめ 講義の重要項目を復習し期末試験の準備を行なう。
16 期末試験

 

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https://canvas.law.nagoya-u.ac.jp/enroll/BGBXAN

Assignments Summary:

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