コース要綱

:(9300045)法哲学

[講義基本情報]

教員: 松尾 陽
その他の教員:
科目種別: 基礎隣接
開講時期: 春学期
対象年次: 1年(3年コース)
開講時限: 木4
単位数: 2
必修の有無: 選択
教室:

 

講義概要 法曹は、日常的な業務の中では、法とは何か、裁判とは何か、正義とは何かという問題を考えることはあまりないだろう。しかし、これらの問いに直面せざるをえない困難な事例に直面することはある。あるがままの現状を観察することだけでは、これらの問いにアプローチすることはできない。法哲学は、時に空想的な事例を用いて、思弁的にこれらの問いにアプローチする。この思弁性は抽象的で難解で日常とは縁のないものだというイメージがあるが、必ずしも正しくはない。
生き方を考える際にも、人は思弁している。人はそれぞれ一回きりの人生しか生きることはできない。しかし、そのあるがままの生を受け入れているわけでは必ずしもない。いかに生きるべきかを考え、自分の生の行方を見定めようとする。他の人の人生を外側から観察しているだけでは、その問いにアプローチすることはできない。だからこそ、テレビドラマや小説の登場人物に自分と重ね合わせてみるのである。これも思弁なのであって、哲学者のみが行える特殊な営みではない。普通の人が行っている営みである。
法哲学を受講することの意味は、法曹の想像力を鍛え上げることにある。これは、夢見がちな法曹を作り上げることではない。現状を豊かに捉えるためにこそ、想像力が必要となるのである。
本講義で取り扱う法哲学は、一般法哲学ではなく、応用法哲学と呼べるものである。可能な限り、実定法の問題と関係が深いテーマを取り上げる予定である。
この授業の主眼は思考を学ぶことにある。思考を学ぶためには、講師が考えていく有り様を見せるしかない。それゆえ、この授業は知識を提供することを直接の目的としないが、思考の前提として一定の知識を提供することはある。上記の問いについて、講師が、受講生の目の前で/受講生とともに、考えるだけである。そして、こんな風に考えたい/考えたくないと思っていただければ、つまり、講師の思考方法を教師/反面教師として捉えていただければ、それが、今後、法曹として生きていくうえで一つの「引き出し」となり、想像力の糧となるだろう。
到達目標 (1)具体的な法実践上の問題と法哲学の問題との関連性を理解する。哲学的問題性格がわかる。
(2)既存の法の実体的基礎・手続的基礎を反省的に捉えることができる以上を通じて、法フェティシズムから脱却し、しかしながら/それゆえにこそ、社会における法の役割をより深く理解することを目指す。
教科書 レジュメや文献を配布
参考書・参考資料 ・田中成明『現代法理学』(有斐閣)978-4641125483
・平野仁彦・亀本洋・服部高宏『法哲学』(有斐閣アルマ) 978-4641121485
・宇佐美誠・瀧川裕英・大屋雄裕『法哲学』(有斐閣) 978-4641125674
成績評価方法 (1)発言・討論への参加意欲と内容 50
(2)報告の質 50% 
履修条件 なし
ニュースなどをみておくこと。考えること。

 

本年度は前半と後半に分けて、前半を講義篇。後半を演習篇とする。また、演習篇では、行政法についての教材を取り上げていきます。演習篇では、学生が文献をまとめ、報告をするという形式を採用する。学生の要望や参加人数に応じて講義や演習内容を適宜変更します。

 

1 イントロダクション

・ 今年度の授業課題

・法律家の仕事は何なのか

・司法制度改革において裁判所、ひいては法曹の役割はどのように規定されたのか

・司法制度改革の意義と限界(基本編)

【参考文献】中川丈久「議会と行政――法の支配と民主制:権力の抑制から質の確保へ」磯部力・小早川光郎・芝池義一『行政法の新構想Ⅰ:行政法の基礎理論』(有斐閣,2011年)とりわけ153頁―165頁

 2 法は何でないのか?

    • アリストテレスにおける「人間」の規定
    • 政治をするサル
    • サルは約束できるのか?
    • 法と言語

【参考文献】フランス・ドゥ・ヴァール『政治をするサル』(*松尾作成のレジュメを配布予定)

 

3 規範性とは何か?

    • 「規範性」という問題
    • 規範性の根拠(意志、理性、慣習)。
    • 規範性の形態(強制との関係)
    • 法と規範性との関係(価値観の多様化と公式化)

【参考文献】H・L・A・ハート(長谷部恭男訳)『法の概念』(ちくま文庫)

 

4 人間の行動を制御するもの

    • 制御手法の多様性: 生物学的/技術的/社会的(*技術と社会との関係)
    • 社会的制御の多様性: 新シカゴ学派
    • 法と道徳、法とアーキテクチャ

【参考文献】松尾陽「「法とアーキテクチャ」研究のインターフェース―代替性・正当性・正統性という三つの課題」松尾陽編『アーキテクチャと法』(弘文堂,2016年)第一章

 

5 制御の制御としての法

    • 制御の制御としての法という課題。
    • 正当性と正統性
    • 正当性としての個人の自由
    • 正統性としての個人の同意、そして民主政
    • 実体的/手続的/組織的制御

【参考文献】松尾陽「「法とアーキテクチャ」研究のインターフェース―代替性・正当性・正統性という三つの課題」松尾陽編『アーキテクチャと法』(弘文堂,2016年)第一章、松尾陽「アーキテクチャによる規制と立憲主義の課題」法律時報87巻4号84―91頁

 

6 正義論(1)リベラリズム

    • 19世紀のリベラリズムと法理論:個人の自由、権力分立、議会制
    • 20世紀のリベラリズムと法理論:自由観の変遷、福祉国家
    • 自由についてのまとめ

【参考文献】松尾陽「立憲主義」『古典で読む憲法』1章

 

7 正義論(2)民主政

    • なぜ民主政なのか?
    • 真理は、民主政を要請するのか、あるいは独裁を要請するのか? ミルとアーレント
    • 民主政をいかに制度化するべきなのか(E-デモクラシー論も踏まえて)
    • 国民主権との関係は?
    • 民主的実験主義

【参考文献】松尾陽「民主政」『古典で読む憲法』2章

 

8 正義論(3)現代的課題

    • リベラリズムと民主政との関係: 無関係、相克、協働
    • リバタリアニズム
    • コミュニタリアニズム
    • 自由からの逃走: トックヴィル、フロム、リースマン

 

演習篇

9 制御の制御としての法(2)行政法の基本篇

    • 法律による行政の原理
    • その例外と限界
    • 行政手続き

【参考文献】藤田宙靖『行政法入門(第7版)』第3講から第5講。

 

10 侵害行政を考える

    • 侵害とは何か
    • 行政作用とは何か
    • 法的秩序付けとは何か

【取り上げる文献】小早川光郎「行政法の存在意義」磯部力・小早川光郎・芝池義一『行政法の新構想Ⅰ:行政法の基礎理論』(有斐閣,2011年)第1論文

【参考文献】小早川光郎「規制行政と給付行政」『行政法の争点[第三版]』8頁

 

11 行政法によって保護される利益は何か?

【取り上げる文献】前田雅子「行政法のモデル論」磯部力・小早川光郎・芝池義一『行政法の新構想Ⅰ:行政法の基礎理論』(有斐閣,2011年)第2論文

【参考文献】仲野武志「行政法における公益・第三者の利益」

 

12 グローバル化と行政法

【取り上げる文献】斎藤誠「グローバル化と行政法」磯部力・小早川光郎・芝池義一『行政法の新構想Ⅰ:行政法の基礎理論』(有斐閣,2011年)第3論文

【参考文献】原田大樹「グローバル化と行政法」高木光・宇賀克也『行政法の争点:新・法律学の争点シリーズ8』(有斐閣、2014年)

 

13 権力の抑制と質の確保(1)

【取り上げる文献】中川丈久「議会と行政――法の支配と民主制:権力の抑制から質の確保へ」磯部力・小早川光郎・芝池義一『行政法の新構想Ⅰ:行政法の基礎理論』(有斐閣,2011年)の前半部分115頁―148頁

 

14 権力の抑制と質の確保(2)

【取り上げる文献】中川丈久「議会と行政――法の支配と民主制:権力の抑制から質の確保へ」磯部力・小早川光郎・芝池義一『行政法の新構想Ⅰ:行政法の基礎理論』(有斐閣,2011年)の前半部分149頁―166頁

 

15 まとめ

    • 制御の制御にはどのようなツールがあるのか。
    • 法はどのようなツールであるのか。

 

※本コースにメンバー登録を希望する学生は下記URLにアクセスしてください。名大IDとパスワードで認証し、「コースへの登録」ボタンをクリックします。

https://canvas.law.nagoya-u.ac.jp/enroll/R3WDBH

Assignments Summary:

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