コース要綱

国際私法 Conflict of Laws (Private International Law)

[講義基本情報]

教員: 横溝 大 Dai YOKOMIZO
その他の教員: -
科目種別: 講義
開講時期: IV期 Ⅵ期 Ⅷ期
対象年次: 2年 3年 4年
開講時限: 金4
単位数: 2
必修の有無:
教室: -

 

講義概要

経済のボーダーレス化に従い私人の国際的活動は増加の一途を辿り、それに伴い私人間の(或いは私人と国家間の)国際的法律関係に関する問題も多様化且つ複雑化しつつある。海外での交通事故、国際的な自動車の盗難、独占禁止法や通信法の域外適用また各国法規の抵触、国有化・収用措置や資産凍結措置の国際取引への介入、多国籍企業の複数国での大型倒産、アメリカ懲罰的損害賠償判決の我が国での執行の可否等、そういった問題の例としては枚挙に暇がない。また、このような財産関係事件に限らず、身分関係事件においても、離婚の国際裁判管轄、子供の引渡を命じた外国判決の我が国での執行の可否、国を跨った子供の奪い合い、代理出産に関する親子関係を確認した外国判決の我が国での承認等、国際的紛争事例は夥しい。
このような複雑な国際的法律関係を規律する法律が抵触法(広義の国際私法)である。本講義では、外国法適用制度(準拠法選択規則)を中心に、その基本的知識を提供する。受講者には、教科書・参考書により各テーマについて予習を行うこと、及び、レジュメに挙げられた裁判例や参考文献を出来る限り読むことが期待される。

 This lecture will give you the basic knowledge about Private International Law (Conflict of Laws). Participants are expected to prepare for each topic with textbooks before each session and to read decisions and relevant articles as much as possible.   

到達目標 抵触法の基本的構造と外国法適用制度の基本を理解すると共に、国際民事紛争に関する具体的イメージを持てるようにすること。
教科書 中西康=北澤安紀=林貴美=横溝大『国際私法(Legal Quest) 第2版』(有斐閣・2018年)
参考書・参考資料

・澤木敬郎=道垣内正人『国際私法入門(第8版)』(有斐閣・2018年)
・神前禎=早川吉尚=元永和彦『国際私法〔第3版〕』(有斐閣・2019年)

・道垣内正人『ポイント国際私法総論 第2版』及び『各論 第2版』(有斐閣・2007年,2014年)
・櫻田嘉章=道垣内正人編『国際私法判例百選〔新法対応増補版〕』(ジュリスト別冊・2007年)
・石黒一憲『国際私法 第2版』(新世社・2007年)
・『法の適用に関する通則法関係資料と解説』(2006年・別冊NBL110号)
・小出邦夫『一問一答新しい国際私法 法の適用に関する通則法の解説』(商事法務・2006年)
・神前禎『解説 法の適用に関する通則法』(弘文堂・2006年)
・澤木敬郎=秋場準一編『国際私法の争点(新版)』(ジュリスト増刊・1996年)
・木棚照一=松岡博編『基本法コンメンタール国際私法』(日本評論社・1994年)

成績評価方法 期末試験による。
履修条件 特になし。
授業時間外学習の指示 *事前にアップされた資料と裁判例及び文献を読み、質問に対し考えて来ること。
質問への対応方法 *メール及びオフィスアワーで対応する。
その他の注意  今年度から、法科大学院の国際私法Ⅰとの共同開講科目とする。

 

テーマ 講義内容 授業時間外の学修活動 関連ページ
1 主権免除
(10月2日)
我が国裁判所において外国国家や外国中央銀行を被告として民事裁判を遂行したり、国内にある外国国家の財産に対し民事執行を行うことは可能か。所謂絶対免除主義から制限免除主義への我が国における展開と平成21年に成立した対外国民事裁判権法を確認した上で、最判平成21年10月16日を中心に、今後予想される解釈論的問題の幾つかについて議論する。 ・LS国際私法Unit21
・最判平成21年10月16日民集63巻8号1799頁
・倉地康弘・曹時 63巻7号218頁
・村上正子・国際私法判例百選176頁
2 管轄総論
(10月9日)
国際民事紛争は如何なる場合に我が国裁判所で審理されるべきか。管轄配分説と逆推知説との理念的対立、マレーシア事件に関する昭和56年最高裁判決とその後の下級審裁判例による「特段の事情」論への流れを確認した上で、最判平成9年11月11日を中心に、予測可能性と具体的妥当性とのバランスについて議論し、新たな国際裁判管轄法制について検討する。 ・LS国際私法Unit22
・最判平成9年11月11日民集51巻10号4055頁
・孝橋宏・最高裁判所判例解説民事篇平成9年度1320頁
・中野俊一郎・国際私法判例百選180頁
3 財産関係(10月16日) 財産関係に関する国際裁判管轄につき、新たな国際裁判管轄法制における個々の管轄権限の妥当性を検討しつつ、とりわけ最判平成13年6月8日を中心に、幾つかの具体的問題点について議論する。 ・LS国際私法Unit23-3
・最判平成13年6月8日民集55巻4号727頁
・高部眞規子・最高裁判所判例解説民事篇平成13年度475頁
・高橋宏志・国際私法判例百選190頁
・横溝大「国際裁判管轄法制の整備」ジュリ1430号37頁
4 身分関係
(10月23日)
離婚の国際裁判管轄に関する所謂昭和39年ルールと身分関係と財産関係との整合性に関する従来の議論を確認した上で、最判平成8年6月24日を中心に、あるべき具体的判断枠組について議論する。 ・LS国際私法Unit24
・最判平成8年6月24日民集50巻7号1451頁
・山下郁夫・最高裁判所判例解説民事篇平成8年度458頁
・櫻田嘉章・国際私法判例百選211頁
5 管轄合意
(10月30日)
国際裁判管轄においても管轄合意は有効な防御方法となる。管轄合意に関する最判昭和50年11月28日を中心に議論した上で、新たな国際裁判管轄法制における扱いも確認しつつ、国際裁判管轄に関する当事者の合意の影響について考える。 ・LS国際私法Unit23-4
・最判昭和50年11月28日民集29巻10号1554頁
・友納治夫・最高裁判所判例解説民事篇昭和50年度524頁
・高橋宏司・国際私法判例百選200頁
【参考】
・中野俊一郎「国際裁判管轄の合意」ジュリ1386号(2009年)54頁
6 国際的訴訟競合
(11月6日)
国際民事紛争においては、略同一の事件が複数国の裁判所に係属する状況が生じ得るが、そのような場合、各国裁判所はどのように調整すべきなのだろうか。国際的訴訟競合を巡る従来の承認予測説、特段の事情説、訴えの利益説などの対立を確認した上で、東京家判平成17年3月31日及びその控訴審たる東京高判平成17年9月24日を中心に、あるべき解決方法について議論する。 ・東京家判平成17年3月31日(LEX/DB28131220)
・東京高判平成17年9月24日(LEX/DB28131221)
・LS国際私法Unit28
・渡辺惺之「国際的二重訴訟論-訴えの利益による処理試論-」判例民事訴訟法の理論(下)(1995年)475頁
・藤下健「国際裁判管轄研究会報告に関わる若干の問題点について」判時2028号3頁
7 承認執行の対象
(11月13日)
民訴法118条、民執法24条により承認執行の対象となる外国民事判決とは何か。外国判決承認執行制度に関する基本的枠組を確認した上で、懲罰的損害賠償に関する最判平成9年7月11日を中心に、上記の問題について議論する。 ・LS国際私法Unit27-1,2
・最判平成9年7月11日民集51巻6号2573頁
・佐久間邦夫・最高裁判所判例解説民事篇平成9年度840頁
・横山潤・国際私法判例百選224頁
8 送達要件
(11月20日)
送達条約10条(a)は郵便による直接送達を有効なものとしているが、我が国は何ら留保を示していない。このような状況において、上記送達に基づいてなされた外国判決は民訴法118条2号の要件を充たすのか。東京高判平成27年9月24日を中心にこの問題について議論する。合わせて、国際的な送達方法についても確認する。

・LS国際私法Unit26-1
・東京高判平成27年9月24日判時2306号68頁

・多田望・リマークス 55号138頁
・八並廉・ジュリ1518号314頁

9 公序等
(11月27日)
公序要件の適切な運用のあり方について、代理母に関する最判平成19年3月23日、及び、子の引渡しが問題となった東京高判平成5年11月15日を題材に議論する。 ・最判平成19年3月23日民集61巻2号619頁
・林貴美・判タ1256号38頁
・中野俊一郎・ジュリ1354号332頁
・LS国際私法Unit27-3
・東京高判平成5年11月15日高民集46巻3号98頁、判タ835号132頁
・渡辺惺之・平成5年度重要判例解説296頁
・釜谷真史・国際私法判例百選222頁
10 まとめ
(12月4日)
外国判決承認執行に関し最判平成10年4月28日民集52巻3号853頁を使って総括的な議論を行う。 ・最判平成10年4月28日民集52巻3号853頁
・国際私法判例百選の当該事件についての解説
・河邉義典・最判解民事篇平成10年度(上)450頁
11 総論(1)
性質決定と送致範囲
(12月11日)
外国法適用制度の基本的枠組である性質決定と送致範囲について説明した上で、最判平成6年3月8日を題材に性質決定について議論する。 ・最判平成6年3月8日民集48巻3号835頁
・大内俊身・最高裁判所判例解説民事篇平成6年度249頁
・国際私法判例百選の当該事件についての解説
12 総論(2)
不統一法国の指定等
(12月18日)
各国法秩序の中には、アメリカ合衆国のように州毎に異なる私法を有している地域的不統一法国や、宗教毎に異なる法を有している人的不統一法国がある。そのような国の法を準拠法として指定した場合、どのように処理すべきなのか。横浜地判平成3年10月31日や東京地判平成2年12月7日を中心に、通則法38条及び40条の解釈について議論する。 ・LS国際私法Unit3(判時1418号113頁、判時1424号84頁)
・佐野寛・判例評論410号34頁
・横山潤・ジュリ1022号188頁
・河野俊行・私法判例リマークス1993下165頁
(出来れば、鳥居淳子・平成4年度重要判例解説284頁)
13 総論(3)
反致
(12月25日)
準拠法国の抵触法が日本法を準拠法として指定するのであれば日本法を適用するという規定、反致。このような規定の存在意義とその正当化理由はどこにあるのか。従来の議論を確認し、新たな正当化理由を模索した上で、最判平成6年3月8日を基に具体的論点について議論する。 ・LS国際私法Unit4(家月46巻8号59頁、判時1493号71頁、判タ846号167頁)
・秋場準一・ジュリ989号111頁
・国際私法判例百選の当該事件についての解説
14 総論(4)
公序
(1月8日)
外国法の内容を見ずに準拠法を指定する外国法適用制度は、最後の安全弁として公序則を持つ。その審査基準は何か。また、何が我が国の公序なのか。離婚に伴う財産分与が問題となった最判昭和59年7月20日を題材に、公序を巡る様々な論点について考える。 ・LS国際私法Unit5
・最判平成59年7月20日民集38巻8号1051頁
・遠藤賢治・最高裁判所判例解説民事篇昭和59年度358頁
・早川眞一郎・国際私法判例百選26頁
15 外国法の適用(1月 22日) 裁判所による外国法の適用にはしばしば困難が伴う。適用される準拠法やその内容につき、裁判所と当事者はどのようにその役割を分担すべきだろうか。また、外国法の内容が不明であった場合にはどのようにすべきだろうか。大阪地判昭和35年4月12日下民集11巻4号817頁及び大阪地判平成25年3月21日2013WLJPCA03216005を題材に、これらの点について考える。

・大阪地判昭和35年4月12日下民集11巻4号817頁

・大阪地判平成25年3月21日

2013WLJPCA03216005

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